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                                12-01-02
        ドイツの古城    〜歴史の旅
       【第2号  猫城】
                       http://burgen.hoops.ne.jp/
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○はじめに

 みなさんこんにちは,発行人のぺんたです。みなさんは,ドイツに一体いくつ
の城があると思いますか。答えは,沢山です。1万とも2万とも言われています。
 どの城にもその城の歩んだ歴史がありますので,それをみなさんに紹介します。

 第2号は,ローレライ岩近くに立つ猫城です。ライン川下りがコースに入って
いるパックツアーでドイツ旅行をされた場合,この先のザンクト・ゴアルスハウ
ゼンか対岸のザンクト・ゴアールで船を降りることになると思います。各国の団
体さんがここで下船するので,それぞれのツアコンさんが忙しそうに駆けずり回
っているところです。ついでに言うと猫城のあるザンクト・ゴアルスハウゼンは
犬山市と姉妹都市です。


●猫城(Burg Katz 正式には Burg Neu-Katzenelnbogen)

 ザンクト・ゴアルスハウゼンの上流,有名なローレライ岩のすぐそばに立つ。

 1371年頃,ヴィルヘルム二世カッツェネルンボーゲン伯爵が軍事拠点として建
設し始めました。主要部分はこの時代に建設されています。
 1395年にヨハン・フォン・カッツェネルンボーゲンがトリアー司教に対抗する
ブルクとしてさらに完成したものにしました。もちろん,ライン川の通関として
も使用されていました。
 1479年にカッツェネルンボーゲン家が途絶え,婚姻関係からヘッセン方伯のも
のになります。ヘッセン時代にベルクフリートに更に上層階が設けられます。ベ
ルクフリートは60mの高さ(本によっては40〜50m)に達し,ラインラントで一
番高いベルクフリートとなりました。
 17世紀,ヘッセン・カッセル家とヘッセン・ダルムシュタット家,ヘッセン・
ラインフェルス家との間に争いが起こます。1623年にヘッセン・カッセル家のも
のになります。しかし1626年,5週間に渡る包囲の後の砲撃で主塔との屋根と司
令室が破壊され,火災により多くのものを失いました。そしてヘッセン・ダルム
シュタット家のものになります。そして三十年戦争の終わり1647年に,ヘッセン・
カッセル家が再び城を取り戻します。
 七年戦争でフランス軍の手に落ち,1763年までフランス軍が支配します。
 1806年までなんとか城は良い状態で維持されていましたが,最後のラインの砦
としてナポレオン命令で爆破され,廃墟になりました。
 1916年にナッサウ公国が取得して以来,何度も所有者が代りますが,当時のザ
ンクト・ゴアルスハウゼン郡の郡長,フェルディナント・ベルクが城を手に入れ
ます。彼はロマン主義の住居として再建します。一見中世風ですが,中世時代の
城の姿とは異なるものになりました。
 1989年,城の維持費の高さに,ザンクト・ゴアルスハウゼンは城を400万マル
ク以上で城を売り出しました。現在,城は日系ホテルになっており,個人所有で
す。


 城に近づくことはできるが,内部の見学は不可。


●ローレライ伝説

 ハインリッヒ・ハイネの詩は有名ですが,ここは古代より数多くの歌に歌われ
てきました。ケルンやマインツには遥か昔の有名な詩人たちが彼らのローレライ
の歌や楽器と共に眠っているそうです。

 それは一人のニンフ。魅力のある黒い目,肩にかかるたっぷりとした巻き毛の
美しい金髪の女性が,その美しい髪を櫛で梳きながら,いつも同じ岩の上で美し
い歌を歌っている。若い船乗りは彼女を見れたことを幸運に思うが,そこは岩礁
や渦のある難所。彼女の美しさに見とれてしまうと船は沈んでしまう。(ニンフ
でも美しい歌でもなく,実際は見通しの悪い夕暮れ時や夜,霧の日にこの危険な
場所を通ろうとしただけ。)
 ある日,この地に修道士ゴアールがどこからともなく布教をしに来て,ここに
住み着きました。彼は毎日ライン川の魚を捕って食べて暮らしていました。ワイ
ン農家の娘,洗濯上手なリウトヒルディスが彼の身の回りの世話をしており,彼
にとって最初のキリスト教改宗者となりました。
 彼の家はライン川の左岸に合ったけれども,右岸のローレライ岩のそぐ傍に,
水のきれいな流れの穏やかな,洗濯をするにはもってこいの場所があり,彼はそ
こに洗濯小屋を建てました。新たな布教拠点とするためでもあります。
 最初の洗濯日,長い金髪の若い娘がいました。彼女は新しい洗濯場を試すため
に,足のつま先まで裸になり,水の中に入りました。その姿はローレライと見間
違うほど似ていました。
 修道士ゴアールは毎夕岩の上流で魚を捕っていました。彼は裸の女性を見て嫌
悪し,どっか行けと合図しました。彼女の方は自分のところに来てと合図を送り,
合図の送り合いが続きました。彼は危険なニンフについて注意を受けていました。
 彼はローレライに罵詈雑言を浴びせ掛け,ついに岩場から追放することに成功
し,再び釣り糸を垂れました。
 誘惑に打ち勝った彼は更にこの地で布教を活動を続け,後に列聖されました。



○基本用語ミニミニ解説
 ブルク(Burg)
    城砦。中世騎士の時代に主に建てられた,軍事機能に重きを置いた城。居住
    性に乏しい。

 ベルクフリート(Bergfried)
    塔。城を特徴付ける基本構造の一つ。時に天守とか望楼と訳されている。入
  り口は地上数メートルの所にある


○あとがき

 この城の周りで起こった争い事っていうのは,殆どヘッセン方伯家の身内争い
じゃん。というか,兄弟喧嘩。
 1989年といったら,バブルの頃ですね。当時のレートを知らないから,日本円
にするといくらになるのか全然分かりません。日本人の所有ということまでは分
かったけど,どこの誰なのか,そんな情報がどこにもない。いったいどんな人が
買ったんだろうか。
 伝説のニンフって,黒い目に金髪?遺伝子モザイク?キメラマウスとか思わず
いらんことが頭の中を過ってしまった(笑)。ゴアールはただの洗濯女としか見
ていなかったけど,彼女はゴアールのことを好きだったのだとしたら,ちょっと
彼女がかわいそうだよな。

 最近“Stronghold”という築城戦略シュミレーションPCゲームを買って,家事
もせずにずっぽりはまり込んでいました。いち早く城砦学に基づいた城を完成さ
せたいところだけど,住民からの好感度,食糧状況,財政状況やら,兵士の配置
やら,奥が深い…。ここんとこあまりに寒すぎて出不精になっていることもあっ
て(-_-;)。


次号予定は華やかな城館,名門ホーエンツォレルン家のジグマリンゲン城。
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    発行人:ぺんた
    サイト:http://burgen.hoops.ne.jp/
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