ブルクの種類
他にもいろいろな分類の仕方はあるようですが,
Friedrich-Wilhelm Krahe著
『Burgen des deutschen Mittelalters Grundriss-Lexikon』に基づく分類です。
ブルクの種類はその立地条件から大きく分けて3つある。山城,平城,岩城である。更に細かくそれぞれについてみていくと,次のようになる。
平城(Flachlandburgen)
耕地が近く,移動も楽で,水の確保が容易と言う利点は在るが,防御性に難。
島(Insel)
湖に浮かぶ島や川の中州に立つブルク。城を建てることが出来るような地理的条件は少ないため,この形式のものは非常に少なく全体の0.3%しかない。名前は
-wörth,-werderで終わる。
平地(Ebene)
城を立てる場所としてはあまり好ましくない。しかし山が全然無い北ドイツ平原等は平地に建てるしかない。ヴェストファーレン地方(Westfalen)に多い。
この場合多くは水城(Wasserburg)の形をとる。周りに水掘りを張り巡らせて敵の侵入を防いだ。
それゆえ,湿地帯,小川の側に建てられる。
水路を作って川から水を引き込むか,または池に人工島を作ってそこに建てた。
上述の島の場合もそうだが水城の場合,冬でも水が凍らず,多少の日照り続きでも水が枯れないようにしなければならないのが難しかった。
後にブルクの時代が終わりシュロスの時代になったとき,水城はシュロスにはもってこいの立地条件のことが多かったため,簡単にシュロス化された。現在,水城または元水城であることが分かっているのはブルク全体の26.7%である。
ブルクからシュロスになるとき,元々在ったブルクの形が分からないほどになってしまっているのも多く,そのようなものも含めるとブルクの30%以上は水城であったと推定される。
参考:ブューディンゲン城(Schloss Büdingen)
丘(Hügel)
何も無いところに建てるよりかは幾分かマシ。全体の3.9%がこの立地条件。
だが歴史は古く,最初のブルクといったらこの形態。
適当な丘が無くて人工的に丘を作って建てたのをモッテ(Motte)というが,そもそも人工的に土を持って作った丘をモッテと言う。
山城(Höhenburgen)
防御性に優れるが,生活水の確保が困難。移動もさる事ながら,建築材料を運ぶのも大変。
突出部(Sporn)
山がちょっと突き出たところに立つ。ブルクの23.7%がこの立地。
ライン川沿いに立つ猫城(Burg Katz)がこれに部類されるでしょう。
山側は空掘りを作ってそこに跳ね橋を架けたと思う。
それ以外の部分は急斜面であり,かなり防御性に優れた城になっている。
山(Berg)
実にブルクの1/3,33.3%がこのタイプ。すべての方角が山の急斜面になっており,非常に攻めにくくなっている。そして約10%の城が−ベルク(-berg)という名前になっているのも特徴。
一度も落とされたことの無いと言う,ライン川沿いに立つマルクスブルク(Marksburg)がその典型でしょう。
山の斜面から山の頂上に立つ城を眺めると,とても攻める気になりません。
山腹(Hang)
山側側攻められると,多分一溜まりも無いと思うので,あまり適していません。
そのせいか,この立地条件の城は0.4%でしかない。
ライン川沿いの,エーレンフェルス城跡(Burgruine Ehrenfels)がこのタイプ。
角(Ecke)
全体の2%。山腹や平地に建てるよりも防御には優れる。
攻撃されうる場所は2面。
縁(Rand)
全体の0.8%。
一応山には建つけど,急斜面部分が1面しかないため,防御性能は殆ど平城に近い。
尾根(Kamm)
この立地条件もあまり好まれておらず,1.8%。
攻撃されうる面が2面,それも向かい合わせになっているので,その両方に気を配るのは領主とて難しいので,選ばれなかったんだと思われる。
岩城(Felsenburgen)
岩山(Felsenturm)
切り立った岩盤の上に立てるのは非常に理想的。山の頂上に立てるよりも理想的なのだが,そのような条件の整った土地は非常にまれであるため,全体の4.2%。シュヴェービッシュアルプ地方(Schwäbischen Alb)やオーバープファルツ地方(Oberpfalz)等,限られた範囲になってしまう。
欠点は,岩山の頂上の面積が狭いこと。
住居用の面積が確保できず,麓にフォアブルクがあることが多かったようだ。
洞穴(Höhle)
全体の0.4%。チューリンゲン地方(Thüringen)に多い。
防御はとにかく入り口さえふさげば良かった。そして最後は抜け穴から脱出するというものらしい。